負けのイメージ2

3ゲーム目。コートチェンジ。
今度は、相手チームの年配プレイヤーのサーブ。
「ゲームカウント2‐0」
とコールし、年配のサーバーは、早いモーションで、サービスを打った。
フォールト。
セカンドサーブ。軽くトスし、コントロール重視でサーブを打つ。
サイド寄りに、イン。
味方後衛が、打ち返す。年配のプレイヤーも負けずに打ち返し、ペースのある(お互いしっかり打ち合う)ラリーが続く。
前衛の僕が、ほとんどポーチ(ボレー)しないとすると、相手後衛は、ストロークがしやすい。
また、相手後衛は、僕がボレーが苦手なことを知っているから、コースが逸れ、前衛に行ったとしても、拾えばいいだろうと、あまり気にしていないように見える。
相手後衛は、角度をつけて、ショートクロスを打って来た。
それを拾う味方後衛。返球したコースは、クロス方向。
少し短いので、相手後衛は、前に出ながら打つ。
この時点で、気付くべきだった。僕は、後衛が、コート外に寄った分、センター付近に位置していた。
相手後衛は、走りながらクロスに打つと見せかけて、ストレート。サイドラインと並行にボールを打った。
僕は悔やむ。相手後衛が、パッシングが得意な事を良く知っていたから。走り込む時は、要注意だったのに。
せめて、サイドだけは抜かせたくなかった。
15‐0
次は、アドサイドからのサーブで、僕がレシーバーになる。
第1ゲームと同様、フォアハンドストロークのイメージをもって、ポジションに立つ。
スイングの際、ラケットに重心を移した後、ボールの勢いに負けないよう、重心を身体に戻すようにラケットを振り抜くこと。
相手のサーブ。
フォア側に来た。
僕はスイングをする。
インパクト。
しかし、ボールは、ネットを越えずに転がる。
大振りをしたのに、手打ちになってしまった。
30‐0
数少ない場面を思い通りに出来なかった。
当てて返すだけのスイングにすれば良かったのか。
タイミングを合わせさえすれば、サーブの威力が強いほど、良いボールが返るはずなのだ。
以前一緒にプレイした経験者が言っていたが、うまくなると、ある時から、インパクトの音が変わると。確かにそうだ。そしてその音が魅力だ。
次は、前衛。
パートナーのリターン。ファーストサーブは、フォールト。
セカンドサーブ。
緩いボール。
しかし、パートナーは、そのボールをネットにかけてしまう。
僕の弱気が移ったか、彼にとっては、凡ミス。
40‐0
次は、僕のリターンの順番。なんとかしたいと思う。でもどうやって?
練習も沢山してきたわけではない。どうやって頑張ろうか。
一つあるのは、フォアハンドのイメージだけだ。これができたら、勝てる。勝てないまでもゲームにはなる。そこに持ち込みたい。
相手のファーストサーブ。
フォールト。
次のサーブは、遅いので、僕は、立ち位置を少し前にとる。
セカンドサーブ。
フォールト。
ダブルフォールト。
40‐15
「ラッキー。」
相手のミスで、点をもらった。
何も出来なかったが、ラブ(0点)ゲームには、ならなかった。
次は、パートナーのリターン。
相手のサーブ。
パートナーが打ち返す。相手前衛にボールが飛ぶ。
相手前衛は、ボールを叩く。
しかし、叩こうと振ったことで、大きくアウト。2ゲーム目の僕と同じミス。
40‐30
相手のミスで、なんとかここまで来た。
何もしていないが、デュースになれば、このゲームの行方は分からない。
相手のサーブ。
バックサイド(身体の左側)にボールが来た。
緩いボールだったので、思い切ってショートクロスに打つ。
ネット上ギリギリを通ってリターンエース。
 
 
40‐40
デュース。
勝つには2ゲーム連取が必要。条件は相手も同じ。
なんとか踏ん張りたい。
デュースコートからのサーブ。
年配の相手サーバーがファーストサーブを入れる。
パートナーがリターンをする。
前には詰めない。
サーバーである年配プレイヤーは、深い球を打って前に出た。並行陣。
パートナーは、ボレーしにくい低く短い球を打つ。
年配プレイヤーは、ノーバウンドで、うまくボレーした。しかし、つなぐボレーで、ポイントを決めるボレーではない。
僕の前にフワッとしたボールが来る。
僕もボレー。
しかし、年配プレイヤーの正面。別のところを狙えばいいのに。
年配プレイヤーに、足元にボレーを打たれる。
アドバンテージ、サーバー。
あと1ポイントを続けてとられると負け。
僕は、リターンの位置につく。
相手のサーブ。
バックハンド側にボールが来る。
あまり早くないので、できるだけクロスに返す。相手後衛もクロスに返してきた。
これも相手の作戦だったのかもしれない。
僕は少し、ポジションが前に、そしてサイド寄りになり、前衛の横を、ストレートに狙った。
しかし、うまくコントロールできず、ボールは、コートをオーバー。
3ゲーム目も落とした。
4ゲーム目。
僕のサーブ。
サーブもスピード、威力ともになく、自信はない。
とにかく、入れていこう。
1球目。
デュースサイド(右サイド)からの緩いサーブ。
極端に短いサーブになってしまう。
相手の若いレシーバーは、前進しながら、スイング。
しかし、打ったボールは、コート外へアウト。
勢いのない球は、返って打ちにくい。
15‐0
次は、アドサイドに移り、年配プレイヤーに対してのサーブ。
また、緩いサーブ。
年配プレイヤーは、初めからポジションを前にとり、打ち返す。
しかし、今度は、ネットにかかる。
30‐0
ボールをうまく持ち上げられなかったのだ。
ここまで、相手のミスにより、リード。
ラッキーでしかない。ゲームになっていない。
悔しい。
しかし、それでもなんとか1ゲームとりたい。
また、デュースサイド(右サイド)から、若いレシーバーにサーブ。
相手レシーバー、今度は、慎重に返してくる。
ここで、味方前衛が、ポーチ(ボレー)に出る。
センターに抜ける。
40‐0
「ナイスボレー。」
助かった。
30‐0までは、とれても、そこから点を取るのは難しい。
あと1ポイント。
1ゲーム取れれば、1‐3になり、負けても、完敗ではない。内容がなってなくても、4タコよりマシだ。
アドサイド(左サイド)からのサーブ。
思い切って振ってみる。フォールト。
やはりダメか。
無理はせずに行こう。
セカンドサーブ。
今度は、小さすぎてネット。
ダブルフォールト。
40‐15
無意味に失点。
ファーストもセカンドも入れていこう。
デュースサイド(右サイド)からのサーブ。
ファーストサーブ。
フォールト。オーバーする。
先と同じ展開。
少し間を置いて、サーブ。
入った。良かった。
レシーバーから、返球が返ってくる。
普通のボール。
緊張しながら、こちらも返す。
クロスに普通のボール。ぎこちなくて、少し浮いている。相手前衛にポーチ(ボレー)されないように、角度を付けようとしたが、あまりつかない。
相手後衛が、また返球してくる。
こちらも、同様にクロスに返球。
しかし、ネットにかけてしまう。
イメージするスイングができていない。
40‐30
アドサイド(左サイド)からのサーブ。
年配のプレイヤーへのサーブ。
ここで、気付く。後悔。
さっきの、若いプレイヤーへの場面で勝てなかったのは痛い。年配プレイヤーからポイントを取るのは、難しい。
サーブを打つ。
年配プレイヤーのリターン。
タイミングを合わせた打ち方で、ボールに勢いはない。
僕のバックに来た。
スイングする。
クロスに打つ。
しかし、相手前衛にポーチ(ボレー)される。
僕は、コート端に寄っていたため、打ち返せない。抜けて行くボールを見ながら、あきらめる。
40‐40
デュース。
2ポイント連取した方が勝ち。
僕は、デュースサイド(右サイド)からサーブ。若い相手プレイヤーは、クロスにリターン。
僕は、失敗しないように、リターン。
また若い相手プレイヤーが、打つ。
すると、味方前衛が、ポーチ(ボレー)。
しかし、今度は、若い相手プレイヤーに拾われる。
うまく、ロブ(山なりのボール)を打たれる。
僕は、ボールを追うフリをするが明らかに届かない。
アドバンテージレシーバー。
マッチポイント。
追い詰められた。
投げやりになるつもりはないが、少し開き直ってサーブ。直前のポイントが、自分のミスでないからか、今頃になって、無責任にももっと頑張ろうと思う。
フォールト。
ゲームは、勢いで、ポンポンとゲームを取られることがあるが、終盤で、もつれることもある。
あきらめるな。
あきらめながら、そう思う。
一本、一本、その瞬間、瞬間をがんばること。
それが続いていく。
しかし、その瞬間にがんばれることは、何か。
セカンドサーブを打つ。フォールト。
ダブルフォールト。
【終わり】