その2(2011年)(後編)

【シーン7】
カメノテ商事のオフィス、
信野、
「…先輩、聞いてるすか?自分から質問しといて!」
谷原、
「あ、あぁ。ゴメン、聞いてるよ。」
信野、
「良い写真を撮る方法すね!それは、もちろん「忍耐」す。嫌な顔されても、ファインダーをのぞいたまま、シャッターを切るっす。えぐるように、切るべし、きるべしっす。」
谷原、
「嫌な顔って、それじゃ、カメラ小僧だよ。」
天井、
「かわいい写真を撮るには、笑顔!ですよね。笑顔を作るためには、まず、口元、口角を上げる!歯を見せて、目はぱっちり開いて、眉毛は上げ気味に、こぼれるように笑って、上目遣いで!」
信野、
「ワ~オ!、ミクちゃん、かわいさ、五割増っす~。」
谷原、
「なんかプリクラみたい。」
天井、
「安部さんは、好きな写真家とかいるんですか?私は、動物写真家の岩合光昭さん、好きだな~。あと、映画監督やAKB48のプロモ監督もこなす蜷川実花さんとか。」
谷原、
「いやあ、あんまり興味なくて…。」
伊刈、
「それはイカンぞ。谷原!私は、断然、宮沢りえさんを撮った篠山紀信さんの「サンタフェ」だな。ムフフ。」
信野、
「いっそ、元祖・キラキラOLの絵里さんに文字通り、一肌脱いでもらったらどうすか?ヒトハダ。」
信野、伊刈、
「ムフフフフフ。」
♪バソコンのメール着信音
谷原、
「これ、誰だろ?あ、礼華さんからのメールだ。」
谷原(ナレーション)、
「礼華さんからのメールには、短い本文と、2枚の写真が添付されていました。1枚は先日の絵里ちゃんとの写真。もう1枚は、大学時代の写真でした。」
 
音楽…ASKA「はじまりはいつも雨」
 
【シーン8】
~谷原の自宅、
谷原、
「はあ~(ため息)。なんで、この写真送って来たんだろう。」
絵里、
「どうしたの?」
谷原、
「この前会った礼華さんから、写真が送られてきて…。」
絵里、
「見せて。…キレイに撮れてるね。口は悪いけど。もう1枚は?」
谷原、
「うん。コレだけど。あんまり見せたくないなあ。」
絵里、
「見せて。アラ、優介君が大学生の写真。」
谷原、
「うん。多分二十歳の写真。情けない顔してるでしょ。写真写り悪いから、俺。」
絵里、
「なんとなくだけど、「別れるかもしれない」って言われた理由が分かった気がする。」
谷原、
「えぇ~っ!!!」
音楽…とんねるず「情けねぇ」
谷原、
「この写真みたいに俺が情けないから?」
絵里、
「ううん。その逆。この写真、頼りない表情してるけど、何か頑張ろうって感じがとても伝わってくる良い写真だと思う。反対に、この前の写真は、大人しいというか…、変化のない雰囲気。比べると、良く分かる。でも、もちろん、別れる気はないからね。」
谷原、
「絵里ちゃん…。」
絵里、
「それを感じたんじゃないかな。で、メールには、なんて書いてあったの?」
谷原、
「今の美術館の仕事を区切りまでやり遂げたら、また別の事始めたいって。あと、「40歳、2度目の二十歳、おめでとう、いつまでたっても、情けないぞ、谷原優介君」、だって。」
絵里、
「あのヒトなりの応援だね。」
谷原、
「うん。」
 
【シーン9】
~パソコンのキーボードを叩く音
ナレーション、
「今日も、谷原優介は、自宅のパソコンに向かい、日課のブログを書いている。
谷原、
「写真には、色んな思いや気持ちが表われる、心を写す機械なんだな…、2度目の二十歳を迎えたけど、小さくまとまるな、これからも悩みながら、がんばっていこう…と。」
 
携帯の着信音
 
谷原、
「はい。」
谷原の母、
「母さんだけど、写真の方はどうだい?」
谷原、
「あのさ、母さん、写真は、撮る人、撮られる人の気持ちが、ちゃんと表われるものだって分かったんだ。それでさ、今度の年末に帰省したら、健人と絵里ちゃんと俺の家族写真を母さんに撮ってほしいんだ。」
谷原の母、
「いいのかい?私が撮って。」
谷原、
「うん。頼むよ、母さん。」
加藤、
「ハッハッハッハ」
谷原、
「加藤、どこから出てくるんだよ!」
刈谷
「谷原君、ヒドい!谷原家の家族写真なら、この加藤ジョージも入らないと、画竜点睛、締まらないっしょ。正月予定空けとくね~。連れてってくれなきゃ、心霊写真になって出てやる~っ。」
 
【終わり】